透明水彩で描く艦これイラスト メイキングオブソロモンの鬼神さんPart2

パート2・まずは背景から

 何と言いますか、私の場合、基本背景から塗っていきます。主題(今回の場合は綾波)の色合いは主題それ自体の色+環境光によって決まるので、先に環境光をはっきりさせてしまおうという魂胆です。ここでいう環境光と言うのは、光源の位置、向き、強さ、それから光の色合いです。「炎の海の中で吠える綾波」というイメージですので、結果主題の周囲に光源が散らばっているという面倒くさい状況になってしまいました。取りあえず、

・右手の連装砲から噴き出す炎が一番明るい光源。
・手前の炎がその次に明るい光源。
・綾波の背後、奥の炎ほど暗い光源。
・綾波と周囲の艤装は連装砲の炎に照らされている顔周辺を除き、手前ほど明るく、奥ほど暗い。
・主機(綾波背後の煙突状の物体)は完全な逆光。
・一番奥の背景は闇夜を思わせるほどに暗い。

以上の想定で塗っていく事にします。


1・まずは下塗りから
 まず絵の上下にマスキングテープを貼って、上下を帯状に残します。用紙の完成寸法はB4ヨコで縦横比1:1.54ですが、「絵」の縦横比は1:1.62なので上下が断ち切られる形になります。なお、1:1.62はいわゆる黄金比です。曰く、「最も美しく見える縦横の比」だそうですが、私ゃ別にそこまで詳しい訳ではないので、せいぜい横長の絵が好きだから、って程度で使っています。ついでに、あと横長の絵を描くときはたいてい、1920×1080pixelのディスプレイで壁紙に使えるように構図をとっていたりします。
 さて、マスキングテープで作業領域を確保して、いよいよ塗り始めです。炎それ自体の色と、炎の周囲に散乱する光、そして炎による照り返しを意識しつつ適当に下塗りします。この後どんどんと重ね塗りしていくので、耐水性のウィンザーアンドニュートンのカナリアイエローとサンシャインイエローを重ね塗りしています。



2・マスキング
 画像だと分かり辛いですが、炎の形を残すためにマスキング液でマスクをしています。炎の部分のグレーになっている部分がマスキング液を塗った部分です。下絵を紙に印刷する際に炎のアタリの線を濃く印刷してしまったため、この線を後で何とか目立たないようにしなければなりません。


3・さらに下塗り
 ドクターマーチンのインディアンイエロー、サンセットオレンジなどで炎の暗い部分や赤い光の散乱を塗っていきます。敢えてムラになるように塗っていますが、カラーインクは輪染みにならず、きれいなグラデーションが出せるのでやりやすいです。また、重ね塗りを繰り返しても顔料のようには色落ちしないと言うのも下塗り向きで便利です。



4・少しずつ炎っぽくしていく
 濃いめのインディアンイエローやゴールデンブラウンでさらに炎の影を塗り込んでいきます。主機から吹きあがる炎や、手前のマスキングした部分の周囲を意識して、炎の形を作っていきます。



5・背景の空を下塗り
 画面一番奥の空を塗っていきます。まずはやはりウィンザーアンドニュートンを使っての下塗りです。空の部分はバイオレット、炎の赤い光との境い目近くには少しだけパープルを使っています。



6・さらに下塗り
 背後の空にウルトラマリンを重ね塗り。少しずつ夜っぽくしていきます。


7・空の本塗り開始
 本格的に夜っぽさを出して行きます。空の色はなかなかちょうどいい色が決まらなかったのですが、結局ホルベインのロイヤルブルーを使う事にしました。実際に塗る時には絵を上下逆さまにして、水平線の近くから薄く塗り始め、絵の具を足しつつ画像の上の方へとウォッシュ掛けで塗っています。カラーインクと違って顔料である水彩絵の具でのウォッシュなので、気をつけないと絵の具が乾く際にダマになって汚くなります。


8・さらに重ね塗り
 ロイヤルブルーをさらに重ね塗りしていきます。敢えてムラを残したりティッシュで一部ふき取ったりして雲っぽくしていきます。空が暗くなってきたので、だんだん炎が明るく光って見えるようになってきました。



9・背後の空が完成
 ホルベインのペインズグレイで空の高い部分と低く近い位置にある雲の影を塗り込みます。これで距離感や奥行きが出てきた・・・かな?


10・背景の炎の塗り込み開始
 空の色合いが決まった所で、今度は綾波の右側奥の炎と水面を塗っていきます。一番奥から塗り始めて少しずつ手前へ向かって塗っていく訳です。ここでは炎と水面を主にホルベインのイソインドリノン・イエロー・ディープ(長ったらしい名前ですがミカンっぽい黄色です)、キナクドリンゴールド、あと煙はイエローグレイ、アンバーなどで着色しています。





11・水面と煙の影を塗って、それっぽく
 細かいところを塗っていくのはカラーインクより水彩の方が向いています。カラーインクだといちいちインクを水で薄めて必要な濃さのインクを作らないといけませんが、水彩なら水で濡らした筆でパレットの絵の具を溶かすだけです。実際、仕上げの段階になるとカラーインクはほとんど使いません。ここでは炎や煙にカドミウム系のオレンジや赤、バーントシェンナ、バーントアンバー、そしてセピアなど。水面の影はインディゴなどで塗っています。空を塗る時に使ったペインズグレイと、これから多用する事になるセピアは、それぞれ赤っぽい黒と青っぽい黒と言った使い方ができるので重宝します。



 右側奥の背景部分がおおよそ出来上がってきたので、ひとまずメイキングのパート2はここまでにします。パート3ではいよいよ主題である綾波の着色に入っていく事にしますので、よろしければご覧ください。



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